Classici giapponesi con furigana
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げんばくししゅう
原爆詩集
峠 三吉
Leggi 原爆詩集 (げんばくししゅう) di 峠 三吉 (とうげさんきち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 20.927 caratteri · 43 schermate
巷にて
ある婦人へ
その中から
つと身を起すひょろ長い兵士
屑鉄漁りの足跡をかくし
夜汐は海からしのび寄せる
蛾のように黝く
羽ばたきだけで空をよぎるものもあって
夜より明け方へ
あけがたより夜の闇へ
遠く吊された灯
墜ちようとしてひっかかった灯
おびえつつ忘れようとしている灯
ぶちまけられた泡沫の灯
慄える灯 瀕死の灯
一刻ずつ一刻ずつ
血漿を曳き這いずり
いまもあの日から遠ざかりながら
何処ともなくいざり寄るひろしまの灯
歴史の闇に
しずかに低く
ひろしまの灯は溢れ
巷にて
おお そのもの
遠ざかる駅の巡査を
車窓に罵りあうブローカー女たちの怒り
くらがりにかたまって
ことさらに嬌声をあげるしろい女らの笑い
傷口をおさえもせず血をしたたらせ
よろめいていった酔っぱらいのかなしみ
それらの奥に
それらのおくに
ひとつき刺したら
どっと噴き出そうなそのもの!
ある婦人へ
裂けた腹をそらざまに
虚空を踏む挽馬の幻影が
水飼い場の石畳をうろつく
輜重隊あとのバラック街
溝露路の奥にあなたはかくれ住み
あの夏以来一年ばかり
雨の日の傘にかくれる
病院通い
透明なB29の影が
いきなり顔に墜ちかかった
閃光の傷痕は
瞼から鼻へ塊りついて