Classici giapponesi con furigana
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あおいはらふじんのたいつり
垢石釣游記
佐藤 垢石
Leggi 垢石釣游記 (あおいはらふじんのたいつり) di 佐藤 垢石 (さとうこうせき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 46.298 caratteri · 100 schermate
七
早春から初夏までは、主に生きた烏賊を餌に使うが、夏から秋は生きた蝦を鈎に差す。
されば、東京から僅かに十五、六浬離れた海で、春浅い頃から晩秋へかけ、鱗の鮮紅に錦彩を放つ大鯛がいつでも釣れる訳である。釣を休むのは手に霙が冷い十二月、一月の二ヶ月だけだ。
葵原夫妻は、私のこんな話に、長い間未知の国でも歩くように、凝っとして釣趣を唆られていた。
「私もう、何んにも手につかないわ――」
「羨しいなア」
三人は、朗らかに笑った。
七
葵原夫人と私は、鴨居港の黎明の浜に立ったのである。砂の上に、船頭英太郎父子が漁舟を艤して待っていた。
鴨居港は、浦賀から自動車で十分、海上三里の彼方に房州の鋸山と対している。磯を浸す初夏の濤は、緩やかに流れて空は薄く高く曇っているが、西北の微風が昼の凪を物語って絶好の鯛釣日和である。那古船形と思われる遠い岬は、淡い靄に包まれて朝の海にぼうと泛び上り、夢の島のようである。まだ日の出には間があろう。
舟には、富津から持って来た餌の赤蝦も、英太郎が前日の夕、沖で釣って置いたと言う生きている烏賊の餌も充分用意してあった。
先ず、鴨居から松輪の灯台へ向って二里、下浦の沖合四十尋のところにある岩礁で、中鯛釣を試みることになった。