Classici giapponesi con furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Leggi 夏の花・心願の国 (なつのはな) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.816 caratteri · 310 schermate
先生の掌には花の包みがあり、身嗜のいい、小柄な姿は凛としたものがあった。もし彼女が途中で遭難しているとすれば、あの沢山の重傷者の顔と同じように、想っても、ぞっとするような姿に変り果てたことだろう。
私は学徒や工員の定期券のことで、よく東亜交通公社へ行ったが、この春から建物疎開のため交通公社は既に二度も移転していた。最後の移転した場所もあの惨禍の中心にあった。そこには私の顔を見憶えてしまった色の浅黒い、舌足らずでものを云う、しかし、賢そうな少女がいた。彼女も恐らく助かってはいないであろう。戦傷保険のことで、よく事務室に姿を現していた、七十すぎの老人があった。この老人は廿日市町にいる兄が、その後元気そうな姿を見かけたということであった。
どうかすると、私の耳は何でもない人声に脅かされることがあった。牛小屋の方で、誰かが頓狂な喚きを発している、と、すぐその喚き声があの夜河原で号泣している断末魔の声を聯想させた。腸を絞るような声と、頓狂な冗談の声は、まるで紙一重のところにあるようであった。私は左側の眼の隅に異状な現象の生ずるのを意識するようになった。ここへ移ってから、四五日目のことだが、日盛の路を歩いていると左の眼の隅に羽虫か何か、ふわりと光るものを感じた。