Classici giapponesi con furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Leggi 夏の花・心願の国 (なつのはな) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.816 caratteri · 310 schermate
再びその貌が間近に現れたとき、彼はもう相手に叩き与える何ものも無く、今は逃亡手段も殆ど見出せない破滅に陥っていた。
「君はもう死んだっていいじゃないか。何をおずおずするのだ」
特殊潜水艦の搭乗員だった若い友人は酔っぱらうと彼にむかって、こんなことを云った。虚しく屠られてしまった無数の哀しい生命にくらべれば、窮地に追詰められてはいても、とにかく彼の方が幸かもしれなかった。天が彼を無用の人間として葬るなら、止むを得ないだろう。ガード近くの叢で見た犬の死骸はときどき彼の脳裏に閃いた。死ぬ前にもう一度、という言葉が、どうかするとすぐ浮んだ。が、それを否定するように激しく頭を振っていた。しかし、もう一度、彼は郷里に行ってみたかったのだ。かねて彼は作家のMから、こんど行われる、日本ペンクラブの「広島の会」に同行しないかと誘われていた。広島の兄からは、間近に迫った甥の結婚式に戻って来ないかと問合せの手紙が来ていた。倉敷の妹からも、その途中彼に立寄ってくれと云って来た。だが、旅費のことで彼はまだ何ともはっきり決心がつかなかった。
ある日、彼はすぐ近くにある、井ノ頭公園の中へはじめて足を踏込んでみた。