Classici giapponesi con furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Leggi 夏の花・心願の国 (なつのはな) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.816 caratteri · 310 schermate
ずっと前に妻と一度ここへ遊んだことがあったが、その時の甘い記憶があまりに鮮明だったので、何かここを再び訪ねるのが躊躇されていたのだった。薄暗い並木の下の路を這入って行くと、すぐ眼の前に糠のように小さな虫の群が渦巻いていた。彼は池のほとりに出ると、水を眺めながら、ぐるぐる歩いた。水のなかの浮草は新しい蔓を張り、そのなかをおたまじゃくしが泳ぎ廻っている。なみなみと満ち溢れる明るいものが頻りに感じられるのだった。
彼が日に一度はそこを通る樹木の多い路は、日毎に春らしく移りかわっていた。枝についた新芽にそそぐ陽の光を見ただけでも、それは酒のように彼を酔わせた。最も微妙な音楽がそこから溢れでるような気持がした。
とおうい とおうい あまぎりいいす
朝がふたたび みどり色にそまり
ふくらんでゆく蕾のぐらすに
やさしげな予感がうつってはいないか
少年の胸には 朝ごとに窓 窓がひらかれた
その窓からのぞいている 遠い私よ
これは二年前、彼が広島に行ったとき、何気なくノートに書きしるしておいたものである。郷愁が彼の心を噛んだ。甥の結婚式には間にあわなかったが、こんどのペンクラブ「広島の会」