Classici giapponesi con furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Leggi 夏の花・心願の国 (なつのはな) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.816 caratteri · 310 schermate
津軽先生が、この薬とてもよく効くとおっしゃるの」そう云って黒い小粒の薬を彼に見せながら、「そのうち気胸もしてみようかとおっしゃるの、でも、糖尿の方があるので……」と、妻は仔細そうな顔をする。「先生も尿の検査にはなかなか骨が折れるとおっしゃるの」
彼は妻の口振りから津軽先生の動作まで目に浮ぶようであった。……明るい窓辺で、静かにグラスの目盛を測っている津軽先生は、時々ペンを執って、何か紙片に書込んでいる。それは毎日、同じ時刻に同じ姿勢で確実に続けられて行く。と、ある日、どうしたことかグラスの尿はすべて青空に蒸発し、先生の眼前には露に揺らぐコスモスの花ばかりがある。先生はうれしげに笑う。妻はすっかり恢復しているのだった。
「わかったの、わかったのよ」
妻は彼が部屋に這入って行くと、待兼ねていたように口をきった。
「もうこれからは、独りで病気の加減を知ることが出来そうよ、どうすればいいかわかって」そう云って妻は大きな眼をみはった。
「尿を舐めてみたの、すると、とてもあまかった。糖がすっかり出てしまうのね」
妻はさびしげに笑った。だが、笑う妻の顔には悲痛がピンと漲っていた。