Classici giapponesi con furigana
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
Leggi 夏の花・心願の国 (なつのはな) di 原 民喜 (はらたみき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.816 caratteri · 310 schermate
この病院でも医者はつぎつぎに召集されていたし、津軽先生もいつまでも妻をみてくれるとは請合えなかった。三カ月の予定で糖尿の療法を身につけるため入院した妻は、毎日三度の試験食を丹念に手帳に書きとめているのだった。
ある午後、彼の眼の前には、透きとおった、美しい、少し冷やかな空気が真二つにはり裂け、その底にずしんと坐っている妻の顔があった。
「この頃は、毎朝、お祈りをしているの、もう祈るよりほかないでしょう、つまらないこと考えないで一生懸命お祈りするの」
そう云って妻はいまもベッドの上に坐り直り、祈るような必死の顔つきであった。すると、白い壁や天井がかすかに眩暈を放ちだす、あの熱っぽいものが、彼のうちにも疼きだした。彼はそっと椅子を立上って窓の外に出る扉を押した。そのベランダへ出ると、明るい気がじかに押しよせて来るようだった。すぐ近くに見おろせる精神科の棟や、石炭貯蔵所から、裏門の垣をへだてて、その向うは広漠とした田野であった。人家や径が色づいた野づらを匐っていたが、遮るもののない空は大きな弧を描いて目の前に垂れさがっていた。
…………………………
「こんどおいでのとき聖書を持って来て下さい」