Classici giapponesi con furigana
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しんきだんクラブ
奇談クラブ(全)
野村 胡堂
Leggi 奇談クラブ(全) (しんきだんクラブ) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 104.139 caratteri · 208 schermate
花枝の顔は、薄明りの中に、少し傾いて、大きい目が怪訝そうに私を見詰めます。
「此処は何処でしょうね、花枝さん」
運の悪いことに此の屋敷は、塀が高く、植込が深く、二階のバルコニーから眺めても、此処は何処という見当は全く付かなかったのです。
「お、ホ、ホ、貴方のお邸じゃ御座いませんか」
「それは判って居るんですが、――一体此の私は誰でしょう」
「まア秀麿さん」
これが花枝の答の全部だったのです。「秀麿さん」これが私の名前に相違ありませんが、何の秀麿なのか、私はそれを訊き出す勇気もありません。私の姓を源氏か平家か、それとも橘かを聞き定める為には、花枝はあまりに娘らしく、あまりに無邪気だったのです。
そのうちに、恐ろしい眠気が私を襲い始めました。不自然な、不愉快な眠さが、私の全身を穴の中に引き入れるような心持にさせます。多分今しがた女中が持って来た冷たい飲物に、催眠薬のようなものが仕込まれて居たのかもわかりません。
此の儘眠ってしまえば、翌る朝私は、あのいつもの橋の下で、荒筵の中に眼を覚すでしょう。そう思うと、恐ろしい睡魔と闘い乍ら、私は溺るる者のように其の辺を探し廻りました。