Classici giapponesi con furigana
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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Leggi 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 267.766 caratteri · 530 schermate
であった。「俺といえどもそうなんだよ、痙攣れるような思い出ばかりが、頭の一所に残っているばかりで、そのほかのことは覚えていない。……しかし俺はどうしても求める! あの恍惚とした夢を求める!」
――間! しばらくは静かであった。燭台に丁字ができたと見える。燭台の燈火が細まって、部屋の中がおもむろに薄暗くなった。その薄暗い部屋の中で、絶望したような声が聞こえた。
「俺だけは出たい! この境地から出たい! そうして昔の俺になりたい!」胡坐をかいている武士のかたわらに、長々と身体をのばした姿で、横になっていた武士があったが、その武士が悲痛にそういったのであった。「四人の中では最初だった! 俺が一番最初だった! あの、痲痺と陶酔とを味わったのは!」ここでその武士は仰臥した。と、その富士型の秀でた額を、燭台の燈火が橙黄色に照らした。
「一人であるように願ったものだ! あの餌食になるものが、この俺一人であるようにと! ……ところがそこへお前たちが来た! そのほか毎晩外来のものが幾人となくやって来た! どんなに俺は嫉妬したか! どんなに俺は悩んだか! それこそ俺は発狂しそうだった! でも俺は待っていた! どうぞもう一度来るようにと! ああ、そうなのだよ、しかし今では諦めてしまった! 昔にかえりたい! この境地から出たい!」