Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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こうじょうさいぼう

工場細胞

小林 多喜二

Leggi 工場細胞 (こうじょうさいぼう) di 小林 多喜二 (こばやしたきじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 91.234 caratteri · 184 schermate

Aozora Bunko

――林檎喰べたいな。

独言のように云って、お君が寄って行った。

他の女工と同じように、お君も外へ出ると、買い喰いが好きだった。――お君は歩きながら、袂で真赤な林檎の皮をツヤ/\にこすると、そのまゝ皮の上からカシュッとかぶりついた。暗がりに白い歯がチラッと彼の眼をすべった。

――おいしい! あんた喰べない?

林檎とこの女が如何にもしっくりしていた。

――そうだな、一つ貰おうか……。

――一つ? 一つしか買わないんだもの。

女は堪らえていたような笑い方をした。

――……人が悪いな。

――じゃ、こっち側を一噛りしない?

女はもう一度袂で林檎を拭うと、彼の眼の前につき出した。

彼はてれてしまった。

――じゃ、こっち?

女は悪戯らしく、自分の噛った方をくるりと向けた。

――……。

――元気がないでしょう。じゃ、矢張りこっちを一噛り。

彼は仕方なく臆病に一噛りだけした。

其処から「H・S工場」が見えた。灰色の大きな図体は鳴りをひそめた「戦闘艦」が舫っているように見えた。

この初めての夜は、森本をとらえてしまった。彼はひょっとすると、お君のことを考えていた。