Classici giapponesi con furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Leggi 或る女 (あるおんな) di 有島 武郎 (ありしまたけお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.981 caratteri · 295 schermate
「きょう船が検疫所に着くんです、きょうの午後に。ところが検疫医がこれなんだ」
事務長は朋輩にでも打ち明けるように、大きな食指を鍵形にまげて、たぐるような格好をして見せた。葉子がちょっと判じかねた顔つきをしていると、
「だから飲ましてやらんならんのですよ。それからポーカーにも負けてやらんならん。美人がいれば拝ましてもやらんならん」
となお手まねを続けながら、事務長は枕もとにおいてある頑固なパイプを取り上げて、指の先で灰を押しつけて、吸い残りの煙草に火をつけた。
「船をさえ見ればそうした悪戯をしおるんだから、海坊主を見るようなやつです。そういうと頭のつるりとした水母じみた入道らしいが、実際は元気のいい意気な若い医者でね。おもしろいやつだ。一つ会ってごらん。わたしでからがあんな所に年じゅう置かれればああなるわさ」
といって、右手に持ったパイプを膝がしらに置き添えて、向き直ってまともに葉子を見た。しかしその時葉子は倉地の言葉にはそれほど注意を払ってはいない様子を見せていた。ちょうど葉子の向こう側にある事務テーブルの上に飾られた何枚かの写真を物珍しそうにながめやって、右手の指先を軽く器用に動かしながら、煙草の煙が紫色に顔をかすめるのを払っていた。