Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

Leggi 新・平家物語 (しん・へいけものがたり) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 123.012 caratteri · 245 schermate

Aozora Bunko

けれど、どうしても、どうしても、なお、焦きただらし得ない、何かがある。かれは、かの君のくろ髪をつかんでも想いを果そうとあせり焦らだつ。――はッと、夢は、いつも、そのときの、もがきに、さめる。惜しくも、さめてしまうのである。

そのあと。――盛遠はサメザメと泣きつづける。夜半の万象も、声をあわせて、かれのために哭く。

その夜も、妖しい夢の疲れと、慟哭に明けたある朝――未明のころである。

蹌踉と、所も知らず、歩いていたかれは、ふと、違った知覚に衝かれた。颯々と、氷のような冷気に頭を吹きぬかれた。耳の穴からも、脳の中枢へも、どうどうと、暴風のほえるに似た音響がこみ入ってくる。

『おや。……ここは、鳴滝だ。……高雄への道。ああ紅葉』

かれは、満山の濡れ紅葉に、眼をこらした。まだ、朝の月もあるほの明りなのに、けさほど、あざらかに、物の見えたことはない。それは、自分を見出したことでもあった。

九月十四日の夜のことが、忽然と、その場へ、ふたたび身を置かれたように思い出された。――あとに遺された衣川の媼の嘆きや、源ノ渡の恨みや、院の友輩の嘲笑、世間の誹りなども、声をそろえ、形相をなして、おそろしいばかり、自分をほえ責めている。