Classici giapponesi con furigana
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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
Leggi 新・平家物語 (しん・へいけものがたり) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 123.012 caratteri · 245 schermate
――けれど、かの女自身にしてみれば、乳ぶさは、つかんでみても張がないし、乳くびは、杏の種子みたいに黒い。なんとしても、四人の男の子を産み養んだ泉の涸れが皮膚にもある。ことに、あの癇性な清盛が、まだ二ツか三ツころのとき、乳くびに咬みついた歯のあとが、いまでも白ッぽいあとになって残っていた。
『…………』
かの女はふと、むらッと、腹が立った。乳くびが思い出させるのである。――忠盛と別れ、あの貧乏やしきを去った日である。人もあろうに、自分のほおを、火の出るほど打ったのは、この乳ぶさで育てたわが子の清盛ではあるまいか。男の子とは、女親に、一体そんなものであるのだろうか。――としたら、女親とは、なんたるつまらない者だろう。成人してしまえば、ひとりで大きくなった気でいる子に――と、そのおりの口惜しさを、ありありと眸に出して、乳根を、じっと握って見ていた。
『小母さま。……おさきに』
瑠璃子はもう湯殿口の遣戸をこぐって、次の、囲いのうちで、水をつかっていた。
この姫は、ここの当主、中御門家成の妻の姪であった。一般に、早婚の風があって、女性は十三、四歳といえばもう嫁ぐのが少なくないのに、人なみすぐれた容姿をもちながら、なぜかこの姫は、ことし十六という妙齢まで、嫁ぎもせず、叔父叔母の館に養われているのである。