Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 180.256 caratteri · 361 schermate
「そんなでもございません」
濡手拭を、顔に当てながら答えた。
「殿様が、お召しだ。そっと、奥のお庭の中木戸を開けて通れ」
「え、殿様が。……では誰か、昼間のことを、云いつけましたね」
「あんな雑言を吐きちらして、お耳に入らぬわけはない。疋田先生が先ほどまで、お部屋で話しておられたから、多分、疋田様からお聴きになったのだろう。……お手討かもしれぬぞ」
「そうでしょうか」
「奉公人たる者は、朝夕武道怠るべからず――というのは、松下家の鉄則じゃ。家憲の威厳を明らかにすると仰っしゃれば、もう首はないものと思えよ」
「では私は、ここから逃げ出します。こんなことで、死ぬのはいやです」
「ばかをいえ」
能八郎は、日吉の腕くびを捕えて云った。
「貴様を逃がしたら、おれが腹を切らなければならぬ。召しつれて来いという仰せをうけて来たからには」
「逃げることもできませんか」
「貴様は一体、口が過ぎる。少しはものを考えていうものだ。昼間の広言を聞けば、この能八郎ですら、小癪な猿と思う。……とにかく早く来い」
日吉を先に歩かせて、能八郎は後から、刀の柄を握りながら尾いて行った。
黄昏の庭木の暗がりに、白い綿虫の群れがうごいていた。