Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Leggi 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) di 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 240.656 caratteri · 478 schermate

Aozora Bunko

「誰だッ」

「………」

「まてッ。誰だッ」

そのまにすうと煙のように向うへ。

肝は据っていたが、いいこころもちではない。少し青ざめて這入ってゆくと、妻の小芳が湯あがりの化粧姿もあらわに、胸のあたり、乳房のあたり、なまめかしい肉の肌をのぞかせながら気を失って打ち倒れているのです。

「どうした!」

「俺だ! 小芳! どうしたんだ!」

「あッ……」

ふッと息を吹きかえすと、

「怕い!……。怕い怕い!……」

かきすがりざま訴えた言葉がまた奇怪でした。

「白い影が……、煙のような男の影が……」

「のぞいたか!」

「そうざます。お湯からあがって、身仕舞いしているところへ、あのうす暗い庭さきからふうわりとのぞいて、また向うへ――」

梅甫、ききながらぎょッと粟つぶ立ちました

「アハハ……。気のせいだよ」

「いいえ、ほんとうざます。ほかのことはぬしにさからいませぬが、こればっかりは――」

ぞッと水でも浴びたように身ぶるいさせると、もう懲りごりと言うように訴えました。

「このようなうちに住むは、もういっ刻もいやざます。今宵にもどこぞへ引ッ越してくんなまし」

「馬鹿言っちゃいけねえ。俺もちらりと、――いいや、ちらりと見たという奴が目のせい、気のせい、みんなこっちの心で作り出すまぼろしさ、今御繁昌のお江戸に幽霊なんかまごまごしておってたまるかよ。