Classici giapponesi con furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Leggi 春いくたび (はるいくたび) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 70.094 caratteri · 142 schermate
「追手がまいった、お願い申すぞ!」
いいざま道へ走り出た。
いま若い武士がすべり降りて来た斜面から、四、五人の追手の武士が現れたのである。おゆきは見るより早く、茶釜とならんでいる空の甘酒釜の中へ、その文匣を入れて蓋をした。
若い武士は湯沢のほうへ飛礫のように走って行ったが、追手はすぐに追いついたらしい。
「えいッ」
「やあーッ」
というはげしい気合がきこえてきた。
おゆきは裸で水を浴びたように、爪さきからぞっと総毛立った、父がなにかいったらしい、けれどそれも耳に入らず、ただすさまじい斬合いの気配に全身をしばりつけられていたが、――なかば夢中でふらふらと軒先へ出て行った。
晴れあがった暖かい日差の中で、白虹のように刃が閃いた。人影がさっと入乱れ、鋭い叫声がきこえたと思うと、追手の一人が道の上に倒れ、若い武士は断崖のほうへ身をしりぞいた。四、五人いた追手が今は二人になっている。しかし若い武士のほうも手傷を受けたらしく、正眼にかまえた体がふらふらと揺れていた。――と、その時、湯沢のほうからかっかっと蹄の音がして、さっき五郎吉の馬を追って行った馬上の武士が二人、何か大声にわめきながら乗りつけて来るのが見えた。