Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Leggi 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) di 梅崎 春生 (うめざきはるお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 169.810 caratteri · 345 schermate

Aozora Bunko

あおむけに寝た私の顔のすぐ上を、黒い電線や裸線が幾本も通り、壕内の乏しい電灯の光を吸うて微かに光った。天井からは絶えず細かい砂がはらはらと落ちて来るらしかった。私はそのまま目を閉じた。

(あの眼だ)

軍人以外の人間には絶対に見られない、あの不気味なまなざしは何だろう。奥底に、マニヤックな光をたたえている。常人の眼ではない。変質者の瞳だ。最初に視線が合ったとき、背筋を走りぬけた戦慄は、あれが私の脅えの最初の徴候ではなかったか。私が思うこと、考えることを、だんだん知って来るに従って、吉良兵曹長は必ず私を憎むようになるに決っている。それは一年余りの私の軍隊生活で、学び取った貴重な私の直観だ。あの種類の眼の持主は、誤たず私の性格を見抜き、そして例外なく私を憎んだのだ。

「苦手!」

私はそう口に出して呟いた。此の桜島での生活が、何時まで続くか判らない。しかし死の瞬間までに到る此処での生活の間、彼を上官としていただかねばならぬこと、漠然たる不吉の予感がにがく私の胸をつつんだ。

昨夜の記憶が、遠い昔のことのように感じられた。それは遥かな、もはや帰って行けぬ世界であった。