Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 167.285 caratteri · 330 schermate
と低く呟き、それからひょいと、女に訊いた。
「この客は馴染か」
女はいいえと首を振った、「いいえ、ほんの、二度ばかりです」
新八は女を見た。同心らしい男は、やはり立ったままで、ふところから静かに十手を取出した。
新八はかっと逆上した。男が十手を取出すのを見ると、いっぺんに頭へ血がのぼったようになり、われ知らず、なにをすると叫んだ。
「私がなにをした、私になんの不審があるんだ」
「おまえ震えているな」と同心らしい男が云った、「おれがはいって来たときから震えていた、住所もでたらめだし、偽名をなのった、いや、階下で聞いて来たんだ、おまえ此処では新さんと呼ばれているそうじゃないか」
新八はそれはと吃った、「それは、こんなところでは、誰だって本名は云わないでしょう」
「役人に向かってもか」と男が云った。
「いや、そんなことはない、いま答えたのが本名だ」
「慥かだな」と男は念を押した、「ではもういちど、姓名と年を聞こう」
「年は、年は十九歳」
「姓名は、――」
「野中、野中、忠之進」
「忠之進だって」
男はそこで新八の脇に跼み、十手をゆらゆらさせながら、さっきはそうは云わなかったぞ、と云った。