Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 167.285 caratteri · 330 schermate

Aozora Bunko

肌の香はあまやかで、そしてほのかに刺戟的だった。

甲斐の眉が僅かに歪んだ。はっきりした理由はないが、そのほのかに刺戟的な肌の香は、宇乃のからだの成長をあかしている。少女から乙女に、そうしてやがて、女にと成熟してゆくかなしさ。よろこびであると共に、女性であることの宿命的なかなしさといったものが、漠然と、けれどもおもくるしく、感じられたのであった。

「おじさま」と宇乃が訊いた、「お釣りになった魚を、どうして逃がしてしまいますの」

「あれは鮠だからだ」

「鮠ではいけませんの」

「宇乃は寒くないか」と甲斐が振向いた。宇乃は微笑しながら、いいえとかぶりを振った。

「私は鯉を釣りたいんだ」と甲斐が云った。

「鯉でなくてはいけませんの」

「釣るならばね」と甲斐が云った。

それから暫く沈黙が続き、甲斐は竿をあげて、餌を替えた。

「ここはなつかしい場所だ」と糸を投げてから甲斐が云った、「子供のじぶん、仙台へ来ると、この河原でずいぶん遊んだものだ、そのじぶんは、まだあの崖に段々がなくて、御裁許役所の向うからおりなければならなかった」

「泳ぎもなさいまして」

「泳ぎもした、向うの、あの瀬のあたりでね」