Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 167.285 caratteri · 330 schermate
「まあやるがいい」
「七十郎の盃はいやですか」
「私は飲みたいときに飲む」
「いまは飲みたくないんですか」
「用を聞こうか」
「貴方はかなしい人だな」
七十郎は手酌で飲み、頭を振りながら、独り言のように呟いた。
「貴方は常識円満で、用心ぶかくて、つまらない失策や、へまなことは決してしない、貴方はいつも無傷だ、つまらない、たまには人間らしく、後悔したり悲しんだり、怒ってどなったりしてみたらどうです、原田さん、そんなふうにとりすましてばかりいて、肩が凝りゃあしませんか」
甲斐は黙っていた。額に深く皺がよっているが、表情は静かで、むしろ退屈そうにみえた。
「返答に及ばず、ですかね」七十郎は「ふん」といった、「いちど原田甲斐を怒らせてみたいんだが、貴方はもの覚えがよくて、度量があって、おまけにひどく狡猾だ」
「よほど云いにくい用らしいな」と甲斐が云った。
「なに、たいしたことじゃない」と七十郎はまた飲んだ、「用というほどのことじゃない、ただ、これからまた上方のほうへでかけるんで、ちょっと貴方の耳にいれておきたいと思うことがあったんです」
「私は聞いているよ」
「そうせかせないでもらいましょう、せっかくの酒が不味くなりますからね」