Classici giapponesi con furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 167.285 caratteri · 330 schermate
そして、彼がおみやに酌をしたとき、障子を細めにあけて、茶屋の主婦が覗き、おみやに眼顔でなにか知らせた。
おみやは「そう」と頷き、「さっき頼んだようにしてちょうだい」と云った。
「どうするんだ」と新八はおみやを見た、「まさかきざなことをするんじゃあないだろうな」
「人に逢うの、この隣りへ、あたしに逢う人が来るのよ」
「この隣りだって」
「あたしその人に逢って云うことがあるの、それをあんたに聞いてもらいたいのよ」
新八は、冗談じゃない、と眉をしかめ、おみやはしんけんな眼で、彼の眼をみつめながら、新さん、と云った。
「あたしその人に逢ったら、もうお屋敷へは帰らないつもりなのよ」
新八は口をつぐんだ。
「あたし三年まえ、あんたに立派なようなことを云ったわね、でもやっぱりだめ、自分では本気で、生れ変るつもりだったけれど、あたしに運がないんでしょ、やっぱり元の木阿弥、おんなじことになっちゃったのよ」
「――柿崎さんか」と新八が訊いた。
おみやはかぶりを振り、そのとき、隣り座敷へ人のはいる音が聞えた。主婦がなにかあいそを云い、池に面したほうの、窓の障子をあけながら、すぐおみえになるでしょうと云って出ていった。