Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 167.285 caratteri · 330 schermate

Aozora Bunko

まもなく、隣り座敷でおみやの声がし始め、新八は盃を持ったまま、じっとその声を聞きすました。男の声は低く、はじめは殆んど言葉が聞きわけられなかった。おみやは酔っていた。襖を隔てて聞くと、酔っていることがはっきりわかった。

おみやの口ぶりはやわらかく、誘惑的で、嬌めいていた。挨拶をするとすぐに、なにか取り出して男の前に置いたらしい、男が、えっ、と驚きの声をあげた。

「ええそうよ」とおみやが、念を押すように云った、「それがお頼みの証書、酒井さまと兵部さまの取り交わした証書です、あけて、よく見てごらんなさいな」

男はなにかあけてみているようだったが、新八はおみやの言葉を聞いて、さっと顔をひき緊め、窓に凭れれていた躯を、起こした。

――雅楽頭と一ノ関の取り交わした証書。

内容はむろんわからないが、雅楽頭と兵部の名は、すぐに万治の騒動を思いださせ、兄の暗殺されたことを思いださせた。伊達家六十万石をめぐって、雅楽頭と兵部がなにごとか企んでいる、ということは、柿崎道場にいるあいだに、六郎兵衛の云うことやすることでほぼわかったし、そのために兄も暗殺されたらしい、ということも、おぼろげながら推察することができた。