Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Leggi 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 167.285 caratteri · 330 schermate

Aozora Bunko

「女の寝顔を見るのは、罪ですってよ」

「そうか、――」

「どんな顔をしていまして」

「きれいだったよ」

「悪いかた、少しもお眠りにならなかったんですの」

「そうらしいな」

おくみは甲斐の寝衣の衿をひろげ、その肌へ頬をすりよせながら、おかしいこと、と含み笑いをした。甲斐は黙っていた。おかしいわ、とおくみが云った。初めての晩には殿がたはすぐに眠るし、女はいつまでも眠れないっていうじゃありませんか、それなのにあたしは、すぐに眠ってしまって、自分が寝顔を見られているのも知らないなんて、なんだかずうずうしいようでいやだわ、恥ずかしい、とおくみは云った。甲斐は黙って、おくみの背を撫でた。

「でも、へんだわ」暫くして、おくみが顔をあげ、甲斐を見あげながら云った、「いつかの晩は、そこの隅にきれいな娘がみえたでしょ」

「知らないね」

「いいえ、ちゃんとみえたんですよ、ですからあたし怖くなって、逃げだしたじゃありませんか」

甲斐は手を伸ばして、団扇を取り、静かにあおぎながら、そうだと思った。自分も遠いこだまのように、おじさま、と呼ぶ声を聞いたように思った。

「そんな気がしただけさ」

「いいえ慥かに見えたんです」