Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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たなださいばんちょうのかいし

橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇

橘 外男

Leggi 橘外男ワンダーランド 怪談・心霊篇 (たなださいばんちょうのかいし) di 橘 外男 (たちばなそとお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 112.181 caratteri · 219 schermate

Aozora Bunko

「その音色が澄んでね、人の心の中へ溶け入って事情を知らない人が聞いても、しんみりと涙の湧いてくるような気持がする時分にね、御家老が御殿から帰っていらしたんだよ」

「ほう、誰か尺八を吹いてるな」

と身につまされるような気持で、家老は馬から降りてしまいました。いつもに似ず、静かに静かに腕を組みながら、ソロリソロリと長い敷石道も忍びやかに、出迎えの人たちも眼顔で制して、居間へはいっても障子の陰に突っ立ったまま、じっと池の方へ聞き耳をたてていました。やっと尺八を吹き終えた坊さんは、笛を袋へ納めると、眼に一杯涙を湛えながら屹と屋敷の方を睨みつけていました。

「お高! これで俺の気持がわかったろう? どこに眠ってるか知らねえが、成仏してくれよな。行くところへ行きなよ。だが口惜しかんべえ、なあお高! 人に怨みがあるものか、ねえものか、鬼になって棚田の家に仇を返してやれ! 生き代り生まれ代って祟りをしてやれ。棚田大膳の家に三代たたぬ間に見ろ! この屋敷にぺんぺん草を生やしてくんど!」

そして僧はそのまま野原の方へ歩みを移してしまいましたが、涙ぐまんばかりに凝然と耳を澄ませていた、我儘な家老の心に、また途端に残忍とも、酷薄とも言わん方ない気持が蘇ってきました。