Classici giapponesi con furigana
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ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
Leggi 武州公秘話 (ぶしゅうこうひわ) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 107.572 caratteri · 209 schermate
こう云う場面をそっと隙間から覗いたとしたら、どんな気持がしたことであろうか。天井の高い、うすら寒く廣々とした座敷の中に屏風を囲って、四方から詰め寄せる真っ黒な夜の闇を燈心の灯で防ぎながら、その、ぽつりと一点水に油を滴らしたような纔かな明りの圏の裡に、此の三人が朦朧とすわっているのである。夫人は黙々として紙の上に筆を動かし、侍女は静かに墨を磨り、主は一人悦に入りながらとき/″\盃のふちを舐めている。そして、夫人が示す短冊を眼の前に捧げて読み下す様子だけれども、そのひそ/\とした声音は暗い四隅に吸い込まれて、何を云うのかまるで聞えない。屏風の面には片耳のない茶筌髪の首が大きな影を落し、それをうしろに背負っている主の顔は、光線の加減で兎唇のところが洞穴のように凹んで見え、あたりに鬼気を発散して、桔梗の方の妖精じみた美しさ迄が何か此の世のものでないように凄じい。それにしん/\と更けた深夜、戸外にはおり/\雨がざあッと音を立てゝ降る。………そう云う室内の異様な感じは、蓋しあの屋根裏の首装束の光景に劣らないものがあったであろう。
桔梗の方が二三首書いて差し出したあとで、今度は織部正が、頭をひねりつゝ漸く一首をまとめ上げて日頃の上達の程を示し、夫婦が互の出来栄えを褒め合ったりして、先ずはその夜の遊興もみやびやかに終りを