Classici giapponesi con furigana
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ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
Leggi 武州公秘話 (ぶしゅうこうひわ) di 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 107.572 caratteri · 209 schermate
それも人目を忍びつゝ刹那のよろこびに生きたのであって、しみ/″\打ち解けて語り合う折などは一と夜もなかったであろう。いや、彼が恋いしたのは桔梗の方その人よりも、むしろ彼女が演じたところの特異の役割りにあったのだから、それ故になお未練を残したことであろう。事実、桔梗の方に劣らぬ美女には今後も出遇うことがあろうけれども、此の上が置かれたような不思議な舞台、取り分け鼻のない三枚目などが引き立て役に登場する芝居は、全く彼に誂え向きの世界であって、そう云う背景と配役に囲まれた高貴の夫人を見ることは、二度と再び豫期する訳には行かないのである。されば河内介の畸形的情慾は夫人に離れることを惜しむと共に、これらの環境から遠ざかることを強く厭ったに違いない。唯併しながら、二人共筑摩家の滅亡が近きにあることを期していたので、尚此の後の手筈を示し合わせ、やがて再会の日を約しつゝ暫しの別れを告げたのであった。
池鰹鮒家の息女お悦の方、―――後の松雪院は、河内介が多聞山の城に帰ってからまだ半年もたゝない永禄元年の三月に、桐生家に輿入れした。時に河内介は二十二歳、松雪院は十五歳であったと云う。