Classici giapponesi con furigana
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がらすどのうち
硝子戸の中
Leggi 硝子戸の中 (がらすどのうち) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 52.702 caratteri · 105 schermate
私はたった一度そこで髪を刈って貰った事がある。
平生は白い金巾の幕で、硝子戸の奥が、往来から見えないようにしてあるので、私はその床屋の土間に立って、鏡の前に座を占めるまで、亭主の顔をまるで知らずにいた。
亭主は私の入ってくるのを見ると、手に持った新聞紙を放り出してすぐ挨拶をした。その時私はどうもどこかで会った事のある男に違ないという気がしてならなかった。それで彼が私の後へ廻って、鋏をちょきちょき鳴らし出した頃を見計らって、こっちから話を持ちかけて見た。すると私の推察通り、彼は昔し寺町の郵便局の傍に店を持って、今と同じように、散髪を渡世としていた事が解った。
「高田の旦那などにもだいぶ御世話になりました」
その高田というのは私の従兄なのだから、私も驚いた。
「へえ高田を知ってるのかい」
「知ってるどころじゃございません。始終徳、徳、って贔屓にして下すったもんです」
彼の言葉遣いはこういう職人にしてはむしろ丁寧な方であった。
「高田も死んだよ」と私がいうと、彼は吃驚した調子で「へッ」と声を揚げた。
「いい旦那でしたがね、惜しい事に。いつ頃御亡くなりになりました」