Classici giapponesi con furigana
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ちくはくき
竹柏記
山本 周五郎
Leggi 竹柏記 (ちくはくき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 45.798 caratteri · 91 schermate
六の三
杉乃はめげなかった。
女客は自分だけだということも、主人側から無視されていることも、まったく気にかけないというようすで、盃も取ったし、隣席の客に話しかけられれば、快く返辞をし、静かに笑ったりした。屈辱を感じたり恥じたりしているようすは些かもみえなかった。
二献の膳が片づくと、八束の妻が舞をまった。たぶん江戸から伴れて来たのだろう、見たことのない、若い下座が四人、笛、鼓、小鼓、太鼓をつとめた。
曲は桜狩というのだそうで、巧拙はわからないが、たいそう華やかであり、振の派手な舞いぶりであった。杉乃は無感動に、おちついて観ていた。桃山風の華麗な屏風、立て列ねた燭台のまばゆい光り、贅を尽した酒肴と選りぬきの客たち、……これらはみな、岡村八束の価値とその威勢を示すかのようであった。彼は今すべての客の上にいる、やがてもっと上に、もっと高くいるようになるだろう、彼自身もそう自負し、客たちもそれを認めているようだ。
――みごとに変ったものだ。
孝之助は圧倒されながらそう思った。
舞が終って、賑やかな喝采が始まると、杉乃はそっと立って、手洗いにでもゆくふうにさりげなく出ていった。