Classici giapponesi con furigana
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ぎょもん
魚紋
吉川 英治
Leggi 魚紋 (ぎょもん) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.582 caratteri · 30 schermate
四
『元より、只今すぐにとは申しません。いずれ又、改めて、夜分でも、お店のほうへ上る事にいたしますから――』
牢番といえば、伝馬者のうちでも、ひどい薄給と極っていた。さだめし、女房子をかかえて苦しい生活をしているのであろう。いかにもいじけた――恟々した眼で、密談がすむと、すぐ起って、障子を開けた。
『……あっ。』
と、吃驚したような声をもらして、喜多川春作は、梯子段の中途からあわてて、階下へ影をかくした。
『――誰だ、立ち聞きしていやがったのは』
山岡屋が、そこから覗き下ろした時は、勿論、誰もいなかった。
梯子段の下で、牢番の男が、
『じゃあ御免なさいまし。……お邪魔をいたしました』
と、傴僂のような背中を見せて、挨拶していた。
『誰か知らぬが、虫のすかねえ奴がいる。人の密談を盗み聞きなどしやがって……油断も隙もなりゃしねえ』
行燈の下においてある煙草入を取って、ぽんと筒を鳴らし、梯子段を下りかけようとすると、襖の閉まっている次の暗い部屋で、
『ムーッ……。ああよく寝た』
ふいに誰か、不遠慮な欠伸をしていた。
四
山岡屋は、恟っとして、足を竦めた。
まるで、天から授かり物のような今夜の使の話なのである。