Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate
気味の悪いほど真味な顔色で、お綱がトンと肘掛へ身を凭せてきたので、万吉は目の前へタラリと下がった被布の色地をみつめながら、ちょっと後の言葉を絶句した。
彼の推量では、お綱の頼みごとを、奉行所筋のことか、手先仲間の扱い事か、くらいに考えていたのである。
まさか、法月弦之丞に絡まる、伊達の女の初心な恋とは――露ほども気がつかなかった。
彼が、お綱をここで利用しようとしたのは賢明だが、この時、フイと頼みごとの交換をした一事のため、後々、万吉がどれほどの艱難苦労をし、どれほど骨を削り髄を抉られる原因となったか知れない。
これが近世人気質なら、頼んだことはやらしておいて、頼まれたことはケロリと忘れてしまうだろうが、そうでない時代、また、そうでない気性の万吉。
「誰が嘘をいうものですか」
キッパリと言ってしまった。
お綱は、ほッと嬉しそうな顔をする。
江戸へ帰って以来、いよいよはかなきものと悩んでいた、弦之丞への接近へ、一縷の望みが繋がれて――。
「話してごらん、万吉さん」と、吾から頼まれたがる。
「ほかじゃねえが、お前が懇意なのは何より倖せ。旅川周馬のやつを欺して、お千絵様をこの屋敷から誘い出してくれねえか」