Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate
「お船手組のこのわしが、内から手引きすることじゃ、決してそこに抜かりはない。いよいよ殿のお渡りもあと二月、九月の初めと決まっている」
「でも、何だか私は怖ろしゅうござります」
「なに怖ろしいことがあるものか、それにはこうして渡るのじゃ……」お米がもがく力をおさえて、耳へ顔をピッタリ寄せた啓之助、何か一言二言小声に口を動かしたが、それは今のお米の心を惹く何ものの力もない。
「あ、誰かきます、森様、その手を離して下さいませ」
「よいか、承知であろうな」
「エエあとでよく考えておきますから……」
「何の思案がいるものか、お米、そちは心の奥で、このような男の力がほしゅうはないか」
「あ……あ……森様、息がつまります。離して、離して!」落ちた笄も拾わずに、男の手をふりもぎッたお米は、ふらふらと外へ出て、辻に見えた馴染の駕屋を呼んで、
「あの駕屋さん、急いで大津の追分まで行って下さいな、だちんは幾らでもあげますから」
両の簾を下ろしてスッと身を隠してしまった。そして駕がゆれだすとともにフラフラと軽い目まいをおぼえ、まだ残る男の匂いが気持わるくこびりついた。
「じれッたい駕屋だこと、どうしてこんなに遅いのだろう――ああ弦之丞様、弦之丞様」