Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 262.100 caratteri · 523 schermate
時雨堂。なんとなく心を惹かれる名だ、恋しい情けが運ばれる名である。
でなくともお綱の心は、一途にそこへ向いていた。とにかく、垣間見にでも覗いてみたい、声だけでも横顔だけでも――という恋慕が矢のようにはやる。
で、宿からそッと抜け出した。
その時、お十夜は、まだ昏々と眠り落ちていた。
関の明神へフラフラと歩きだしながら、お綱は、ふと、自分の気もちを不思議に思う。
「おや、どうかしているよ、私は? ……」
だが、引っ返す気にはなれない。
「どうかしている、そろそろ、お綱のやきがまわったのかしら。今まで、男の中にまじりあって、その男が何とも思えず、女だてらに大尽遊びをして、色子や男芸者に水を向けられても、どんな気もしなかった私だけれど……妙だねえ、今度だけは、あの一節切だけが忘れられない。魔がさしたというものかしら?」
はっきりと、自分でその気心の怪しさを意識しながら、足と心だけは、グングンと惹かれる方へ惹かれてゆく。あの時雨堂へ。
とはいえ、世間に一節切の上手は多い。宗長流もたくさんある。ゆうべ夜半に、宿の枕へほそぼそと通ってきた音が、必ずしも、あの虚無僧とはかぎるまい、世間に虚無僧も大勢ある。