후리가나로 읽는 일본 고전
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はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
原 民喜의 原民喜戦後全小説(はるかなたび)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 60,577자 · 124화면
昆虫
やがて、「あーッ」と、いかにも、うまそうに一気にそれを呑み乾したらしい、溜息がきこえる。
……いつのことであったか、もうはっきりは憶い出せぬ。「あーッ」という嗟嘆ばかりは今も私の耳にのこっている。日盛の静かな時刻であった。
昆虫
草深いその佗住居――佗住居と妻は云っていた――には、夏になると、いろんな昆虫がやって来た。梅雨頃のおぼつかなげな、白い胡蝶、潮風に乗って彷徨う揚羽蝶、てんとう虫、兜虫、やがて油照りがつづくと、やんまの翅をこする音がきこえ、蜥蜴の砂を崩す姿がちらついた。その狭い庭には、馬陸という虫が密生していたし、守宮も葉蔭に這っていた。それから、夜は灯を慕ってやって来る虫で大変だった。灯を消しても、邯鄲はすぐ側の柱で鳴き続けたし、大きな蛾は、パタパタと蚊帳のまわりを暴れた。殺して紙に包んで捨てた筈の蛾が、翌朝も、秋雨のなかで動いていることがあった。眼球がキーンと光っているといって、妻は特にその蛾を厭がった。ある年、黄色い蛾が、この地方を脅やかした。その粉にあてられると、皮膚が腫れるというのであった。この蛾のためかどうかはっきりしないが、妻の顔が遽かにひどく腫れ上った。