후리가나로 읽는 일본 고전
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はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
原 民喜의 原民喜戦後全小説(はるかなたび)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 60,577자 · 124화면
ある朝
けはい
ある朝
庭の酸漿が赤く色づき、葉が蝕まれたまま、すがれてゆく頃、私は旅に出て、山の宿でさびしい鳥の啼声を聴いた。夜のあけがた、何か訴えるような、かすかな、せつなげな声が夢うつつに私の耳に入り、それがいつまでも魂にこびりついた。
その頃、妻はよくものごとに苛立っていた。見慣れた顔ながらときにひどく濃艶であったり、どうかすると透き徹ったような謎の顔つきをしていた。眼球が大きくなり、ギラギラ燃えていた。
ある朝(それは昭和十四年九月十日のことであった)私はまだ床にいて、よく目も覚めきらなかったが、とくに起出してごそごそやっている妻のけはいを隣室に感じているうち、ふと、かすかな、せつなげな、絶え入るばかりの咳の声を聞いた。私は寝巻のまま飛出して隣室に行ってみた。妻はぐったりとして、かすかに笑顔をした。それはたった今生じたことを容易に信じかねるような、稍うわずって美しい顔であった。だがこれが我々の身の上を訪れた最初の霹靂であった。
けはい
ごそっと机の引出を開ける音がする。紙をめくっているけはいがする。……私が徹夜して書いた原稿を読んでいるのだ。紙をめくる音も歇む。