후리가나로 읽는 일본 고전
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はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
原 民喜의 原民喜戦後全小説(はるかなたび)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 60,577자 · 124화면
蜜柑
汽車に乗ってからも、目的地に着いてからも、帰りの汽車でも、私は無性に杜甫の行路難にひきつけられていた。
蜜柑
西広島の蜜柑をみかけるようになったのは十二月のはじめ頃からだったが、暫くは私は何気なく見ているにすぎなかった。私が蜜柑に惹きつけられたのは廿日市で五百目五円で買った時からだ。飢えて衰弱している体が要求するのか、ほかに胃の腑を満たすものがないのでこうなのか、とにかく、私は自分でも驚くほど、その時から蜜柑を貪りだした。そうして、私は妻が死ぬる前、頻りに果物を恋していたことを憶い出すと、その分のとりかえしまでするような気持になっていた。私は八幡村から廿日市まで一里半の道を往来しては、一貫目ずつ蜜柑を買ってもどった。「戦争が終ってよかったですな、こうして蜜柑がいただけますもの」と云っている人の言葉まで、何だか私には身に沁みるようであった。
いつのまにか私がいる二階の縁側には、蜜柑の皮が一杯になっていた。すると、夜毎、鼠がやって来て、その皮を引掻きまわし、残っている袋をむしゃむしゃ食うのであった。鼠はしまいには障子に穴をあけ、室内に侵入するようになった。