후리가나로 읽는 일본 고전
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
吉川 英治의 新書太閤記(しんしょたいこうき)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 200,903자 · 400화면
その途中、寝殿の北廊下のほうで、カタンと切窓の蔀を上げる音が聞えた。小姓たちは、
「殿?」
と、思ったのか、足をとめて、覗くように、そこの袋廊下を振り向いた。けれど奥に見えた人影は、涼やかな大模様の帷子に、住吉の松と吉野の桜を染めわけたうちかけを掛けて、その背までみどりの黒髪をうしろへ辷らせている女性であった。
蔀をあげたそこの窓に、桔梗色の暁空が切り抜いたように望まれた。そして吹き入る風にその人の黒髪が揺れ、小姓たちの佇んでいるところまで、伽羅の香いが送られて来た。
「あ、あちらに」
小姓たちは駈け出した。厨の方に水音を聞いたからである。
庫裡の寺僧も起き出ていないので、当然、天窓も大戸もまだ開け放されてはいない。それにおそろしく広い厨の土間や板の間には、まだ昨夜の闇と蚊うなりもそのまま残されているので、夏の朝の何ともいえない温蒸がむっと顔の脂を撫でるのであった。
信長はその甚だ爽やかでない一刻が人いちばい嫌いである。彼が寝所を出たと思うと、いつも小姓たちが駈け寄るのも間にあわないほど、朝のうがい手水は迅速だった。いまも仮の便殿に入ると、筧の注いでいる大甕のかたわらへ寄って、自身小桶をつかんで塗りの盥にそれを汲み入れ、まるで鶺鴒のようにあたりを水だらけにしながら、せっかちに顔を洗いぬいていた。