후리가나로 읽는 일본 고전
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
吉川 英治의 治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 178,609자 · 362화면
「慎吾様、いかがでございますか」
一巡して、彼の前までかえって来ると、
「拙者に?」
と、わざときき返す。
「ええ」
「この間は、妙な所に立っていたな。何をしていたのか、あんな所で」
「…………」父の兵助の耳をおそれるように「あら、そんなこと存じませぬ」
「知らぬことはなかろう。七之助と」
彼女は、あわてて隣席の者の前へ逃げた。
「黒田様、おひとつ」
そして、席順に、次へ辷って、
「長沼様、林様、いかがでございますか」
うしろのほうで、慎吾がまだ何かいうのを、きこえぬ振りをして、いそいで、父の兵助の前まで来て、訴えるように、
「お父さま、お酌を」
と、眼で甘えた。
「うむ」
と兵助は膝に組んでいた指を解いて、むっそりと娘の酌をうけながら、
「お芳、あとでわしの部屋までちょっと来てくれい」
「はい」
彼女は、父の眼が自分の上に注がれているのを感じた。抑えようと努めた動悸がかえって銚子を持つ指先に出てカチカチと父の杯を鳴らした。
「お、来たようだぜ」
「七か。おう、七之助だ」
その時、末席の方がガヤガヤし出したので、思わず眼を向けると、今やっと顔を出したらしい七之助の姿が、煙草のけむりに霞んで見えた。