후리가나로 읽는 일본 고전
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
吉川 英治의 治郎吉格子 名作短編集(一)(じろきちこうし)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 178,609자 · 362화면
自分だけ泊り場所を移したことも、この老人には藩用の都合でといいつくろってあるくらいだった。
――その帰り途である。
わざと遠廻りをして、村から離れた旧陣屋跡まで来ると、これも藩の佐久間象山が移植させたのだという林檎畑がある。その低い枝の下を潜って、ひとりの男が、向うへ行く。
見たような男だが――
慎吾は、先へ廻って、旧陣屋の土塀の蔭にかくれていた。塀の崩れ目は雑草の中に沈んで、また向うへ続いている。百年以上もこのままになっているという建物の真っ黒な棟がその間から見えた。
「おや?」
慎吾は目をみはった。
今その中へ、あたりを見ながら、犬のように這いこんだ男は、七之助にちがいない。七! と思うと、彼は頭のしんを嫉妬の血が熱いようにのぼるのが分った。
いつかお芳と約束したことがある。彼はそれを忘れてはいないが、あの時の騒ぎからつい機会を失っていたのだ。
旧陣屋跡の古家なら、人目にもかからずゆっくり会えるからそこで一度話そうといったあの約束である。――お芳は、自分が教えた場所で、いつのまにか、七と密会しているんじゃなかろうか。
「それでだ。近ごろ同僚のやつが、いやに奥歯に物の挟まったように諫めるのは!」