일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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はるかなたび

原民喜戦後全小説

原 民喜

原 民喜의 原民喜戦後全小説(はるかなたび)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 60,577자 · 124화면

아오조라 문고

草木

それは湿疹だということであったが、妻の躯にはそれからひきつづいて不調が訪れて来たのだった。

夏の終り頃には、腹に朱と黄の縞のある蜘蛛が、窓のところに巣を造った。黐木の枝に巣を張っている蜘蛛も、夕方になると、かならず同じ場所に現れた。微熱のつづく妻は、縁側の静臥椅子に横わったまま、それらを凝と眺めるのであった。そういうとき、時間はいみじくも停止して、さまざまな過去の断片が彼女の眼さきにちらついたのではあるまいか。そこから、昆虫の夢の世界へは、一またぎで行けそうであった。簷のところで、蟷螂と蜂が争っていることもあった。蜥蜴と守宮が喧嘩していることもあった。蟻はせっせと荷を運び、蜂の巣は夕映に白く光った。

妻が死んだ晩、まだ一度も手をとおさなかった緑色の晴着が枕頭に飾ってあった。すると、窓から入って来た蟷螂が、その枕頭をあたふたと飛び廻った、――大きな緑のふしぎな虫であった。

草木

庭の片隅に移し植えた萩は毎年、夏の終りには、垣根の上まで繁り、小さな紅い花を持った。暑い陽光に蒸れる地面も、その辺だけは爽やかな日蔭となり、こまかなみどりが風に揺れていた。私は、あの風にゆらめく葉をぼんやりと眺めていると、そのまま、いつまでも、ここの生活がうつろわないもののような気持がしたのだが……。