후리가나로 읽는 일본 고전
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はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
原 民喜의 原民喜戦後全小説(はるかなたび)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 60,577자 · 124화면
椅子
障子にはたきをかけだしたようだ。……その頃私は床にいて、妻の動作をぼんやり感じているのが好きだった。
いいものが書けた時は、妻の顔色も爽やかであった。私も救われるような気持がした。だが、いいものは書けず、徹夜しても白紙のままのことが多かった。そんな時、私は妻の動作の微細なところまで気に懸った。……爼でコトコト菜葉を庖丁で叩いている。コトコトという細かい音の中に何ともしれぬ憂鬱が籠っている。私は暗黙に咎められているのだった。
このようにして、昔の月日は水のように流れて行った。……だが、近頃でもひとり家にいると、私はどこか見えない片隅に懐しいもののけはいを感じる。自分の使うペンの音とか、紙をめくる音のなかに、いつのまにやら、ふと若い日の妻の動作の片割れが潜んでいる。
椅子
おまえが静かに椅子に横たわり、あたりもひっそりとして吐く息、吸う息を数えながら、うっとりとしていると、空気も爽やかに澄み亘り、おまえのふるさとの山のはざまの青空が浮かび、とびかう小鳥のさえずりもきこえ。
おまえが椅子のうえで頬を火照らしているとき、海の近いこの土地の、わるい湿気や、南風や、苛立たしい光線などが皮膚のすみずみに甦り、何もかも堪え忍ばねばならぬ人間のかなしさがむねをふさぎ。