후리가나로 읽는 일본 고전
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ひかげのまち
幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選
松本 泰
松本 泰의 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選(ひかげのまち)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 52,797자 · 107화면
ビアトレスが五階へ運ばれて、廊下へ出た時には、四辺に人影がなかった。広い旅館の中はしんとして何の物音も聞えない。彼女は部屋の扉の上に記された番号を数えながら、足を運んでゆくと、純白なリンネルの上衣を着た給仕が前方からやってきた。
「百二十八号室をお尋ねでいらっしゃいますか」男は小腰を屈めながらいった。
「左様です。そこへ連れて行って下さい」
「ハイ、畏りました。どうぞ此方へいらしって下さい」男は先に立って、とある部屋の前まで来ると、
「ここでございます」といって一足後に退った。
ビアトレスは軽く会釈をして、手をかけた把手を廻しながら、扉を開けた瞬間、背後に立っていた給仕が突然躍り蒐った。
「呀!」と云う間もなく、ビアトレスは両腕を捩上げられて了った。
云うまでもなく部屋には誰一人いない。恐ろし気な顔をした給仕が、ドキドキする細長いナイフを、ビアトレスの鼻先に突つけている。彼女は努めて平静を装って、
「お前はこんな手荒な事をしてどうしようというの? 私の生命を奪ろうというの?」と叫んだが、余りの怖ろしさにワナワナと体躯を慄わせていた。
相手はビアトレスの手首を後手に括って了うと、薄気味悪く微笑いながらいった。