후리가나로 읽는 일본 고전
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
山本 周五郎의 樅ノ木は残った(もみノきはのこった)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 145,078자 · 285화면
それは過去から呼びかける声のような、極めて淡く、ほのかな、殆んど現実のものではないような匂いであったが、甲斐にはそれがなんであるか、ようやくわかったというようすで、静かに背をまっすぐにした。
「宇乃か」と甲斐が云った。
「はい」宇乃の答える声がした。
甲斐はそちらへ振返った。闇の中にぼうと白く、宇乃の単衣がにじんでみえた。
「どうしたのだ」
「お庭へ出ていらっしゃいましたので」
「起きていたのか」
「眠れませんでしたの」と宇乃は云った、「おじさまが寝ぐるしそうにしていらっしゃいますし、おばあさまのお手紙のことが気にかかって、どうしても眠ることができませんでしたの」
「私の寝ぐるしいのがどうしてわかる」
宇乃は答えなかった。甲斐も自分の問いが不必要だったことに気づいた。宇乃の寝所ははなれているが、どうしてわかるか、などと訊くことはなかったのだ。
「おじさま」と宇乃が囁いた、「おばあさまのお手紙は、悪いお知らせでございますか」
「いや、気にするほどのことではない」
「なにかまた、いやなことでも起こるのではございませんか」
「奥山大学のことだ」と甲斐が云った、「しかし宇乃にはかかわりのないことだし、宇乃が心配してもなんの役にも立たない、そんなことは気にしないでいいよ」