후리가나로 읽는 일본 고전
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ひかりはかげを
光は影を
岸田 国士
岸田 国士의 光は影を(ひかりはかげを)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 138,262자 · 276화면
母は癇性といえるほどの綺麗好きで、また、料理の天才であつた。母の手料理は、なんでもうまかつた。膳が淋しい時でも、実に巧妙な味と色彩のとり合せで、ありふれた料理を引きたゝせ、みなの食欲を弾ませる術を心得ていた。母は、若い頃の写真でみると、下町風の美人という型である。日本橋のさゝやかな旅館の娘だつた。父は、これまた青年教師の時代に、なんの関係か、上京の毎にしげしげこの旅館に宿をとり、そこから、お茶の水や竹早町の講習会場へ通つたのだという、問わず語りの話を聞いたことがある。
京野等志が、そんなエピソードをふいと想い出した時は、高円寺の駅の灯が、もうすぐ先に見えた。青梅街道を中野へんから右に折れて、学校時代の親友の一人が住んでいた下宿のあたりを、当然あと形もないものときめながら、ちよつと歩いてみたかつたのである。彼は、入営の前日、その下宿を訪れた。彼も間もなく応召したという通知があつた。それから、満洲で一度、近くどこかへ連れて行かれるらしいという消息を得たきり、ぱつたり、行先がわからなくなつた。
その下宿のあつたあたりは、まだ家も建つていない、荒れ果てた畑になつていた。