후리가나로 읽는 일본 고전
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はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
原 民喜의 原民喜戦後全小説(はるかなたび)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 60,577자 · 124화면
まだ明るいうちから店が退けることもあった。退ける時には誰かが静三の家の玄関の閾のところまで、金庫の鍵とその日の新聞を置いて行った。彼はその鍵の鳴る音で玄関のところへのそっと行き、その日の新聞を展げてみるのだった。工場と商店に挿まれた狭い門から這入って行く石畳の奥に静三の家の玄関はあったが、兄の敬一は東京の学校へ行っていたし、中学生の静三がその頃この奥まった家の仮りの主であった。母は大人の男下駄をわざわざ、ひっそりとした玄関に並べた。彼は学校から戻って来るとすぐ自分の部屋に引籠り、もう滅多に誰とも口をきかなかった。親しい友も持てずただ何か青白い薄弱な気分と熱っぽい憧れに鎖されていた。ある日、珍しく店の慰労会に誘われて、店員たちと一緒に船遊に出たことがある。陽気に浮かれて騒ぎ廻る大人たちの姿が静三には一向なじめず、何か淡い軽蔑の念をよぶのであったが、島々に咲きほこる桃の花だけが烈しく彼の眼に焼つけられた。
よく彼は二階の窓から夕暮の空を眺めた。低い山脈に囲まれた甍の波の中に、物産陳列館の円屋根が見え、盛場のクラリオネットの音が風に吹きちぎられてここまできこえてくる。