후리가나로 읽는 일본 고전
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はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
原 民喜의 原民喜戦後全小説(はるかなたび)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 60,577자 · 124화면
静三はチェーホフの戯曲に出てくる哀しい人物の心がそっくり彼の気持になっていることもあった。いずれは没落してゆく階級の挽歌――それがもう寒々と襖のまわりに聞えてくるようなおもいもした。ふと突拍子もない家の崩壊がねつけない頭に描かれることもあった。……だが、夏になると、店の方の窓が開放たれるので、ひっそりとした庭を隔てて、卓上電話の声がよくききとれる。寝そべったまま静三は、その声に耳を傾けていると、癇高い声で応答しているのは、昔からその店に通っている今泉であった。その声をきいていると、毎日何もしないでいる静三は暗に自分が咎められているようにおもえた。それから静三はよく長押にある父の肖像を見上げては、これだけの家とあの店を一代で築いた父は何といってもやはり偉かったのだなあ――と、おずおずと考えた。土蔵から父の手帳や古い写真などを見つけると、それを部屋に持って戻り、静三は昔のことを調べだした。
安静に慣れた彼は容易に躯の自信が得られなかったし、何一つ積極的な気持は生じなかった。だが、三十歳をすぎた彼の顔は円々と肥満していて、それは学生時代の面影と較べるともう別人の観があった。