일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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はるかなたび

原民喜戦後全小説

原 民喜

原 民喜의 原民喜戦後全小説(はるかなたび)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 60,577자 · 124화면

아오조라 문고

棲みなれた千葉の借家を畳むと、彼は広島の兄の家に寄寓することにした。その時、運送屋に作らせた家財道具の荷は七十箇あまりあった。郷里の家に持って戻ると、それらは殆ど縄も解かれず、土蔵のなかに積重ねてあった。その土蔵には妻の長持や、嫁入の際持って来たまま一度も使用しなかった品物もあった。それらが、八月六日の朝、原子爆弾で全焼したのだった。田舎へ疎開させておいた品物は、荷造の数にして五箇だった。

妻と死別れてから彼は、妻あてに手記を書きつづけていた。彼にとって妻は最後まで一番気のおけない話相手だったので、死別れてからも、話しつづける気持は絶えず続いた。妻の葬いのことや、千葉から広島へ引あげる時のこまごました情況や、慌しく変ってゆく周囲のことを、丹念にノートに書きつづけているうちに、あの惨劇の日とめぐりあったのだった。生き残った彼は八幡村というところへ、次兄の家族と一緒に身を置いていた。恐しい記憶や惨めな重傷者の姿は、まだ日毎目の前にあった。そのうち妻の一周忌がやって来た。豪雨のあがった朝であった。秋らしい陽ざしで洗い清められるような朝だった。彼は村はずれにあるお寺の古畳の上に、ただ一人で坐っていた。