후리가나로 읽는 일본 고전
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はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
原 民喜의 原民喜戦後全小説(はるかなたび)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 60,577자 · 124화면
罹災以来、彼はもう食べものに好き嫌いがなくなっていた。どんな嫌なものも、はじめは眼をつむったつもりで口にしていると、餓えている胃はすぐに受けつけた。子供の時から偏食癖のあった彼は妻と一緒に暮すうち、少しずつ食べものの範囲は拡がっていた。だが、まだ彼の口にしないものはかなりあった。それが、今では何一つ拒むことが許されなかった。彼は自分の変りように驚くことがあった。そんな驚きまで彼は妻あての手記に書込んでいた。
その板敷の上で目がさめると、枕頭の回転窓から隣家のラジオの音楽がもれてくる。今日も飢じい一日が始まるのかと思いながら、耳に這入ってくる音楽はあまりに優しかった。彼は音楽の調べにとり縋るように、うっとりと聴き入るのだった。恐ろしい食糧事情のなかで、他人の家に身を置いている辛さは、刻々に彼を苛んだ。じりじりした気分に追われながら、彼は無器用な手つきで、靴下の修繕をつづけた。そんな手仕事をしていると、比較的気持が鎮まった。それから、机がわりの石油箱によっかかってはペンを執った。朝毎に咳の発作が彼を苦しめた。
妻の三回忌がやって来た。朝から小雨がしきりに降っていたが、気持を一新しようと思って、彼は二ヵ月振りに床屋へ行った。