일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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ひかげのまち

幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選

松本 泰

松本 泰의 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選(ひかげのまち)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 52,797자 · 107화면

아오조라 문고

「あの顔の印象が薄れないうちに、家へ飛んで帰って仕事にかかるのだ。徹夜だぞ」柏の言葉の終らないうちに、私は背後に軽い絹擦の音を聞いた。と見ると、裾に銀糸で渦巻模様を刺繍した真黒な琥珀の夜会服を着た若い女が、卓子の間を縫って静に歩いてきた。丁度彼女が私の傍を通過ぎた時、軽い音を立てて床に落ちたものがあった。それは目の覚めるような緋房のついた小さな象牙の扇子であった。私は素早く手を延して拾い上げると、背後で、

「お嬢様、お扇子が……」という老婦人の声がした。先に立った女はツと足を停めて振返った。彼女は美しい口許に微笑を浮べながら、私の差出した扇子を受取って、

「有難う」と仏蘭西語でいった。老婦人は乳母か、家庭教師か、二人は軽く一揖して廊下の外に姿を消してしまった。

柏は私の引止めるのもきかず、間もなく、そそくさと帰っていった。

柏に置去りを喰った私は勘定を支払って食堂を出た。食後の葉巻に火を点けて、高い廊下の窓から、火の海のような市街の光景を見下した。まだ時間は早かったし、それに飽気なく柏が帰ってしまったので、どうしても此儘、寂しい川岸の下宿へ帰る気になれなかった。