후리가나로 읽는 일본 고전
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ひかげのまち
幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選
松本 泰
松本 泰의 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選(ひかげのまち)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 52,797자 · 107화면
私はカクストン氏の思惑などを考慮える暇がなかった。
自動車がソーホー街の八十八番へ着いた時は、予定の七時を余程過ぎていた。案内を乞わないうちに、玄関の扉をあけて、支那服を着た老人が、引擦り込むように、私を屋内へ導いた。
「早く、早く、裏口から出なさい。表に厭な奴が見張っている」といって、屏風のような大きな荷物を渡した。地下室から裏庭へ出て、煉瓦塀に沿った小径をぬけるとそこは裏通りになっていた。私は通りかかったタクシーに乗ってユーストン駅へ急いだ。
残念な事には、僅か数分の違いで七時半の汽車に乗り遅れてしまった。私は呆乎と待合室で次の列車を待った。間に合っても、間に合わなくても、兎に角港まで行って見ようと思ったのである。
其日の夕方、汽車は遠い見知らぬ港へ私を運んでくれた。私の乗る筈であった米国行のダイアナ号は、一時間前に港を出てしまった。大荷物を抱えた私は、積重なった古船材の端に腰を下して、白っぽく光っている水平線を視詰めていた。遥に見える一条の煙は、恐らく私を取遺していったダイアナ号であろう。
湿った潮風が、私の心を吹きぬけていった。私は米国行の機会を失ったのを悲しんでいるのではなかった。