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あたまでっかち

あたまでっかち

下村 千秋

「赤い鳥」1935(昭和10)年2~4月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 17,773 字 · 36 页

青空文庫

六

林太郎は、自分が聞いては悪いことを話しているのだ、と思いました。自分のあたまでっかちのことを話しているのだな、とも思いました。それで、おっかさんのそばをそろそろとはなれて、米倉の方へとぼとぼと歩いてきました。

六

「林太郎や、遠くへいくんじゃないよ。」

と、おっかさんがうしろから声をかけました。

「うん。」

と林太郎はふりむきもしないで答えて、さっきおっかさんとのってきた船がつないである水際の方へおりていきました。そこにはさっきのあひるどもが、やっぱりがあがあなきながら、いかにもおもしろそうに泳ぎまわっていました。林太郎はそれをぼんやり見ながら、自分はとうとうひとりぼっちになってしまったような気持になりました。

すると、後の方で、おん、おん、おんというなにかのなき声がしました。ふりむいてみると、小さなまっ白なむく犬がいました。ひつじのようにむくむくした、毛ののびた前足を前へつっぱり、くりくりした茶色の目をきょとんとあけて、わん、わんというよりは、おん、おんというような声でほえたてています。

犬の大好きな林太郎は、いままでなきそうにしていた顔をきゅうに明かるくいきいきとさして、その場にしゃがみながら片手をさしだし、ちょっちょっと舌をならしてよびました。